救命救急科専門研修モデルプログラムについて

地域枠・自治医科大学のかたへ、


「地域医療」は、「地域のニーズに応じた医療」を行うことであり、慢性疾患の継続
治療だけではなく、急病や事故、災害への対応も必要になります。さらに近年、社会
の医療に対する要求や期待が高まり、地域医療でも高い問題解決能力が要求されるよ
うになってきました。医師偏在化による地域医療現場での人材不足に対し自治体は各
大学に地域枠を設け、地域医療を担う医師の養成を行っています。しかし、初期臨床
研修を行った地域枠卒業医師であっても、専門医志向が強くなるとリスクを回避する
ために自らの専門外の患者の応需は行わない傾向が強くなります。近年、地域で不応
需になった専門治療が必要ない患者が遠隔地の総合病院へ搬送される事例が多くみら
れ大きな問題となっています。


岡山大学病院では、日本で唯一、地域枠・自治医大の義務年限がある先生がたのため
に、特別に救急科専門医プログラムを設置しました。


特に高齢者を中心とした救急搬送件数は年々増加の一途をたどり、地域では、小外科・
災害医療・外傷・小児科など内科系以外の領域にも対応できる能力を備え、かつ緊急
事態にも適切に対応できる医師が求められています。来たる超高齢化社会を迎えるに
あたり、地域を預かる医師の在り方も多様な地域のニーズにあわせ対応していく必要
があり、従来の内科・家庭医の医師だけでは対応に限界がきています。地域での多様
な疾患を継続して診療するとともに急性期にも対応できる医師が現状の地域医療に必
要な人材なのです。


このプログラムでは、専門研修基幹病院、および地域の救急医療機関で地域の救急診
療を行い、自立して責任をもった医師として行動することを学ぶとともに、地域医療
の実情と求められる医療について研修します。特に岡山県地域枠の医師に求められる
スキルとして、地域での救急医療機関での治療の限界を把握し、必要に応じて適切に
高次医療機関への転送の判断や迅速な安定化処置ができるようにします。地域には、
治療を完遂させることが出来る十分な設備がない場合もあり、紹介される側である救
命救急センターでの経験が非常に大切です。
救急科専門医プログラムを修了した医師は、安心して地域を任せられる医師であると
いう証明でもあり、そのためには、次にあげる明確な目標をもって研修し、教育する
側もそれを意識して指導にあたります。


岡山大学病院の連携施設一覧

2019年01月15日(火)| NEWS

研修医1年目の小出先生の論文が、レジデントノート2月号に掲載されました

研修医1年目の小出先生の論文が、レジデントノート2月号に掲載されました。

 

見逃されやすい舟状骨骨折をどうやって診断するか、山川先生の指導をうけ、立派にまとめてくれました。

手をついて転倒した若い男性、偽関節になることもあり、見逃してはいけない骨折です。

https://www.yodosha.co.jp/rnote/gazou_qa/index.html

2019年01月11日(金)| NEWS

中尾教授の新年のご挨拶

DHに思う


ご存じのとおり、指名打者(DH: designated hitter)は、野球の試合において攻撃
時に投手に代わって打席に立つ、攻撃専門の選手のことをさします。我々が現役のこ
ろDH制度はまだ西医体では採用されておらず、守備が下手であった私はよく先輩から
もDHがあればなあ、と残念がられたものです。かつては、試合で活躍する選手はどう
しても守備優先になり、打つだけ、走るだけ、という個性豊かな選手はなかなか日の
目を見なかった時代がありました。ところが、このDH制は、「守備はあまり得意でな
いからやりません」というのを許してしまったのです。投手は投げることに専念し打
席にも入らなくてよくなりました。野球も高度に専門化し、攻撃的でより緻密な競技
になりました。



DHの波は医療の世界にも波及しました。臓器別、疾患別に高度に専門化した医療は、
患者さんにとっても恩恵が大きい反面、専門志向の高まりとともに、「専門外だから
診ません」という医師が医療現場にあふれてきました。

内野の後ろには外野手がいてくれますが、打席には自分ひとりしかいません。打席に
立って、「カーブは専門外ですから打ちません」と一度もバットを振らずに撤退する
人はいないでしょう。変化球は得意ではないけれど、なんとか次の塁にランナーをす
すめよう、次につなぐために必死でボールに食らいつくでしょう。これはまさに我々
救急医がやっていることと同じです。


一方で、外野フライを内野手が深追いして、外野手と衝突し長打にしてしまうことが
あります。自分の守備範囲ではないのに、無理して取りに行くとかえって損失を大き
くしてしまいます。確実に打球を処理できる守備範囲を広くするため日々努力をし、
それでもとどかない場合には、残りの野手に的確な指示を出し失点を最小限に抑える、
これは、まさに我々救急医が日常的に行っていることです。



医学も野球も細分化される昨今ですが、走りこんで強い足腰があるからこそ粘りがあ
るプレーが出来ます。走攻守完璧であるのが理想ですが、そうでなくても、走攻守しっ
かり鍛錬した基礎があってはじめて名投手や好打者たりうると思うのです。
小手先だけの技術ではなく、打つ側の、投げる側の、守る側の気持ちを理解して、自
分の限界も知ったうえで全力でプレーする選手が、ここぞというとき最も力を発揮し
活躍してくれます。それは医療の世界でも同じ、広い視野で診療科の垣根を超えて患
者さんを診療し、日々鍛錬を重ねてこそ、高い問題解決能力をもった医師になれるの
です。それがまさに我々救急医だと信じています。

2019年01月09日(水)| NEWS