内藤先生の論文が掲載されました。
Steinberg A, Callaway CW, Arnold RM, Cronberg T, Naito H, Dadon K, Chae MK, Elmer J.
Prognostication after cardiac arrest: Results of an international, multi-professional survey.
Resuscitation. 2019;138:190-197.
Resuscitationという集中治療・蘇生分野ではトップジャーナルへの掲載です。
心停止蘇生後の患者さんの神経学的予後が不良な場合、つまりしゃべったり笑ったり食事をしたり出来ない場合、life-sustaining therapy いわゆる延命治療をするかどうか、家族や医療者の間で大きな問題になることがあります。
一方で、まだ助かる可能性があるのに治療を中断してしまうことに対して、医療者は抵抗があります。
このような背景を検討するため、640人の医療従事者にアンケートを行い、心停止蘇生後患者での治療撤退に関するエラーを医療従事者がどれだけ許容することができるか?を検証した論文です。
全体の集計では「治療すれば良好に生存できるかもしれなかったのに、治療から撤退した:False Positive Rate(FPR)」の許容できる範囲は0.1%以下であったそうです。
一方、「治療して良好に生存できないにも関わらず、治療を行った:False Negative Rate(FNR)」の許容できる範囲は1%以下であると過半数が答えています。
10年目以上の医療従事者よりも5年目以下の医療従事者の方がFPRに寛容であり、集中治療医よりも緩和ケアの医療従事者がFPRに寛容であったことがわかりました。逆に言うと、集中治療の専門家ほど、また経験年数が長いほど、なかなか治療中断の決断をせずに粘る、という現実があらわになったといえます。