災害医療
Disaster medical

最近、皆さんも何かと目にする事の多い「災害」という言葉。災害時には、自衛隊、消防、救助、救急、警察などと共に、「医療」も対応を迫られます。大地震のような広域災害から列車事故などの局地災害、テロなど多数傷病者が発生する事案で「避けられた災害死」を減らす為に医療を展開します。

災害時の医療の特徴は、医療の需給バランスが破綻するところにあります。つまり、平時の医療は人・物が十分にある状態で行われますが、災害時の医療はそれらが不十分又はない状態で行われます。ありとあらゆる知識と技術の応用、そして、判断力を求められる分野であり、これは日常診療での研鑽によってのみ培われるものでもあリます。

また災害時には、多くの医療組織や消防など多機関との連携も重要な活動の一つです。過酷な環境のもとで、協働するチームの一員としての役割を認識し、他医療機関メンバーや自衛隊、消防、警察、行政機関などとコミュニケーションを取りながら、コーディネート、時にはマネージメントする力を発揮しなければなりません。

岡山大学病院は、DMAT指定医療機関、災害拠点病院であり、そして当科では、これらの能力を培えるような救急医療・集中治療分野の研修プログラムを組んでいます。また災害時の医療を発展させるべく、行政機関への働きかけや学術機関として「災害医学」という学問体系の構築に努めています。

その為、各種の災害訓練を企画・運営・参加しており、DMAT(Disaster Medical Assistance Team:ディーマット)、MCLSなど研修会の講師としても多数参加しています。2016年熊本地震への災害派遣実績もあります。

私達は災害医療に尽力すべく、2018年4月から、主要講座名を「救急医学講座」から「救命救急・災害医学講座」に改名しました。晴れの国「おかやま」だからこそ、平時に来たるべき災禍に備える。これからも様々な災害に対応する為、当科の挑戦は続きます。

DMAT

DMATとは、「災害急性期に活動できる機動性を持ったトレーニングを受けた医療チーム」と定義されており、災害派遣医療チームDisaster Medical Assistance Teamの頭文字をとって、略してDMAT(ディーマット)と呼ばれています。

医師、看護師、業務調整員(医師・看護師以外の医療職及び事務職員)で構成され、大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、急性期(おおむね48時間以内)に活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チームです。

「阪神・淡路大震災」で災害医療について多くの課題が浮き彫りとなり、この教訓を生かし、各行政機関、消防、警察、自衛隊と連携しながら救助活動と並行し、医師が災害現場で医療を行う必要性が認識されるようになりました。

現在では、現場の医療だけでなく、災害時に多くの患者さんが運ばれる、被災地の病院機能を維持、拡充するために、病院の指揮下に入り病院の医療行為を支援させて頂く病院支援や、首都直下型、東海、東南海・南海地震など想定される大地震で多数の重症患者が発生した際に、平時の救急医療レベルを提供するため、被災地の外に搬送する、広域医療搬送など、機動性、専門性を生かした多岐にわたる医療的支援を行います。