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【2018年採択論文-英文誌-】

1.Yumoto T, Naito H, Hiraki T, Yamakawa Y, Yamada T, Nakao A.Impact of contrast extravasation on computed tomography of the psoas major muscle in patients with blunt torso trauma.J Trauma Acute Care Surg. 2019 Feb;86(2):268-273

交通事故や高所からの墜落などの鈍的体幹部外傷患者で、腰動脈損傷に伴う大腰筋血腫はしばしば出血性ショックの原因となり得、治療戦略が悩ましいこともしばしば経験されます。治療は経カテーテル的動脈塞栓術(TAE)にて止血を行うことが一般的ですが、どのような患者でこのTAEが必要となるかはこれまで十分に分かっていませんでした。そこで、当院10年間で経験した症例を分析した結果、造影CTで腰動脈損傷が示唆される活動性の出血所見が認められた症例のうち、腰椎横突起骨折の本数(4 vs. 2本, P=0.011)と大腰筋血腫の大きさの健側との比率(2.10 vs. 1.32, P=0.016)がTAE要否の予測因子になる可能性が示唆されました。本成果はJ Trauma Acute Care Surg. 2019年2月号に掲載されました。

 

2.Yumoto T, Naito H, Ihoriya H, Yorifuji T, Nakao A.Mortality in trauma patients admitted during, before, and after national academic emergency medicine and trauma surgery meeting dates in Japan.PLoS One. 2019 Jan 29;14(1):e0207049

人的資源が相対的に減少する可能性のある夜間や休日に死亡率が上昇する現象は“weekend effect”と呼ばれ、院外心停止や急性心筋梗塞、集中治療室入室患者ではこのような現象があるとされていますが、外傷患者でははっきりとした差はないと言われています。近年では関連する全国学会開催日にもこのような傾向があるかもしれないという、いわゆる“national meeting effect”についても盛んに調べられていますが、外傷患者についての研究はありませんでした。今回我々は本邦で外傷患者の診療に主に従事すると考えられる救急医や外傷医が一同に会す日本救急医学会と日本外傷学会の学術集会開催日に外傷患者の死亡率が変化するかについて、日本外傷データバンクを用いて解析しました。学会開催前後1週間の同じ曜日をそれぞれ対照として、院内死亡率は学会中、前、後とそれぞれ7.3%, 8.0%, 8.5%で、各種測定可能な交絡因子を調整しても、少なくとも学会開催日に死亡率が上昇するような傾向は認められませんでした。どこの施設も交代で学会に参加するなどしてカバーしあい、病院・地域の診療の質を担保しているというある種当然の結果が得られたと考えられました。こちらの研究は第46回日本救急医学会総会で発表し、m3の記事にも取り上げられましたが、この度PLoS One. 2019年1月29日号に掲載されました。

 

3.Taihei Yamada, Takaaki Osako, Atsuyoshi Iida, Tetsuya Yumoto, Kohei Tsukahara, Akihiro Watanabe, Hiromichi Naito, and Atsunori Nakao.Increase in the incidence of dermatitis after flood disaster in Kurashiki area possibly due to calcium hydroxide.Acute Medicine & Surgery 2019;10.1002/ams2.389

真備町の水害のあと、消石灰がまかれたために皮膚病変が増えた、という大切な報告です。

 

4.Aokage T, Tsukahara K, Fukuda Y, Tokioka F, Taniguchi A, Naito H, Nakao A.Heat-not-burn cigarettes induce fulminant acute eosinophilic pneumonia requiring extracorporeal membrane oxygenation.Respiratory Medicine Case Reports 26, 87-90, 2019

急性好酸球性肺炎(Acute Eosinophilic Pneumonia: AEP)は、急性の経過で重症呼吸不全を呈する、好酸球性肺炎で、比較的新しい疾患概念です。喫煙や薬剤が原因になりますが、今回世界で例目となる加熱式たばこでの発症例を青景先生が報告してくれました。他院からの紹介でECMOを迅速に導入し、無事に社会復帰された貴重な症例です。

 

5.Yamada T, Osako T, Iida A, Yumoto T, Tsukahara K, Watanabe A, Naito H,Nakao A. Increase in the incidence of dermatitis after flood disaster in Kurashiki area possibly due to calcium hydroxide. Acute Medicine and Surgery (in press)

西日本7月豪雨の際、倉敷市真備町は大きな水害に襲われました。水害がひいたあと、消毒目的で消石灰が散布されましたが、そのために皮膚炎などの皮膚症状を訴えて救護所・臨時診療所を訪れる患者さんが大幅に増加しました。山田先生はJ-SPEEDというデータベースから患者数を分析、皮膚科チームの提言により消石灰の散布が中止されてから患者さんの発生はぴたりと止まりました。消石灰と水害の関係について考察した大切な世界でも例がない報告です。

 

6.Otsuka Y, Yumoto T, Ihoriya H, Matsumoto N, Sato K, Abe K, Naito H, Nakao A. Acute Agitation as an Initial Manifestation of Neuro-Behcet Disease.Case Rep Emerg Med (in press)

初期研修医 大塚先生の論文がCase Reports in Emergency Medicineに掲載されました。救急車の中で大暴れをする男性で、数日前から発熱、風邪症状があり、脳神経内科の先生がたとの共観で見事診断がつき、無事治療が終了しました。皮膚症状や口腔内アフタの既往が診断の決め手になっています。

 

7.Yasuhara H, Naito H, Kosaki Y,Yamakawa Y, Iida A, Yumoto T, Yamamoto H,Yamada T, Tsukahara K, Osako T, Mandai Y, Nakao AEmphysematous cystitis successfully treated with hyperbaric oxygen therapy: case report. UHM 45(6),701-703, 2018

初期研修医 安原先生の論文がUndersea Hyperbaric Medicine誌に掲載されました。特徴的な画像所見を示す気腫性腎炎の患者さんに対して、抗菌薬と高気圧酸素療法で治療し、無事に退院された経験を書いてくれました。

 

8.Kawaguchi M, Yamamoto H, Yamada T, Yumoto T, Aokage T, Ihoriya H, Eto K,Suezawa T, Naito H, Nakao A.Penetrating thoracic ice pick injury extending into pulmonary artery:Report of a case.Int J Surg Case Rep. 2018;52:63-66

初期研修医川口先生の論文が、Int J Surg Case Rep誌に掲載されました。胸に異物がささった患者さんを素早く診断し、心臓血管外科の衛藤先生を中心としたグループに速やかに対応していただきました。精神的要素も考察し、審査員からは高い評価を受けた論文です。

 

9.Asada R, Naito H, Tsukahara K, Ihoriy H, Tanabe T, Koide Y, Kosaki Y,Nakao A. A Difficult-to-diagnose Case of Caffeine Intoxication. J Gen Emerg Med 3(1); 36-38, 2018.

初期研修医浅田先生は、精神科へ進むことが決まっていますが、救命センターで研修中に多くの薬物中毒の診療にあたり、薬物中毒がCTでどのようにうつるか検討し、日本救急医学会で立派な発表をしてくれました。この論文はそのうちの特徴的なカフェイン中毒の画像を示したものです。カフェイン中毒は、最近飲料水に含まれていることもあり、ダイエットにいいという宣伝などの影響から増加しています。診断の方法、臨床所見についても詳細にまとめてくれました。いい論文と思います。

 

10.Sawada K, Ihoriya H, Yamada T, Yumoto T, Tsukahara K, Osako T, Naito H,Nakao A. A patient presenting painful chest wall swelling:Tietze syndrome. World J Emerg Med 2019;10(1):144–148

初期研修医 沢田先生の症例報告がWorld J Emerg Medに掲載されます。沢田先生は春から実家がある京都府立医大で救急医として新しいスタートを切ってくれます。岡山大学出身の救急医が全国で活躍してくれることは嬉しいことです。またいつの日か学会で立派になった姿を見せてください。沢田先生は、胸痛で救急搬送された患者さんで、ACSを疑って様々検査をしたけれど結局は胸壁の痛みであった、という救急外来でたまに見かける胸肋関節炎の症例を報告してくれています。胸痛を訴えて救急外来に来る患者の7-8割は胸壁由来であるという報告もあり、大切な示唆に富む報告です。

 

11.Yamamoto H, Naito H, Osako T, Tsukahara K, Yamada T, Yumoto T, Iida A, Kosaki Y, Oka M, Endo F, Gochi A, Nakao A.Ictal Cardiorespiratory Arrest Associated with Status Epilepticus in Panayiotopoulos Syndrome.  Acta Med. Okayama, 2018, 72(3) pp. 297-300

山本先生の症例報告が掲載されました。井原市の病院で外来で痙攣発作のあと心肺停止をきたした小児症例です。当時10歳の男の子が、嘔吐下痢、腹痛をきたして搬送中に救急外来で心肺停止になり、当科のスタッフが蘇生術を行い、岡山大学高度救命救急センターへ転院搬送、小児神経科と共同で治療を行いました。Panayiotopoulos Syndromeという比較的珍しいタイプのてんかんでしたが、今は普通に学校に通っています。

 

12.Yasuhara T, Naito H, Kosaki Y, Yamakawa Y, Iida A, Yumoto T, Yamamoto H, Yamada T, Tsukahara K, Osako T, Mandai Y, Nakao A. Emphysematous Cystitis Successfully Treated with Hyperbaric Oxygen Therapy Undersea and Hyperbaric Medicine (in press)

初期研修医の安原大貴先生の論文がに掲載されることが決まりました。これは糖尿病患者さんに合併した気腫性膀胱炎を、高圧酸素療法で適切に治療した、という貴重な報告です。高圧酸素療法は、岡山大学高度救命救急センターでは、一酸化炭素中毒や、難治性の骨軟部感染症に使用していますが、気腫性膀胱炎の報告はなく、大変貴重な経験を英文でまとめてくれました。

 

13.Zensho K, Yamamoto H, Tsukahara K, Osako T, Nakao A. Usefulness of Th ree-dimensional CT for Diagnosis of Abusive Head Trauma. Pediatrics International(in press)

初期研修医の禅正和真先生の論文の掲載が決まりました。意識障害をきたし、当初脳炎を疑われていた小児が、3D CTを行うことで頭蓋骨骨折が判明し、結局虐待によるAbusive Head Traumaであったという症例です。小児の頭蓋骨骨折は通常のCTでは見逃されやすく、3Dの有用性を改めて再認識した、という示唆に富んだ報告です。

 

14.Yumoto T, Kondo Y, Kumon K,Masaoka Y, Hiraki T, Yamada T, Naito H, Nakao.  A. Delayed hydronephrosis due to retroperitoneal hematoma after a seatbelt injury.Medicine 97: 23, 2018

高エネルギー外傷で搬送された若年男性のケースで、腰動脈の分枝から少しづつ出血して数週間後に大きな血腫をつくり、外科手術を要した症例を、湯本先生が報告してくれました。腰動脈や大動脈からの細い分枝は、造影CTで少し造影剤の血管外漏出があっても保存的に診ることが多いのですが、慎重に経過を追う必要があるという認識を再度させられた症例でした。

 

15.Hiromi Ihoriya, Hirotsugu Yamamoto, Taihei Yamada, Kohei Tsukahara, Kanae Inoue, Tetsuya Yumoto, Hiromichi Naito, Atsunori Nakao.  Hyperammonemic encephalopathy in a patient receiving fluorouracil/oxaliplatin chemotherapy. Clin Case Rep. 2018, 13;6(4):603-605.

当科専攻医庵谷先生の論文が掲載されました。抗がん剤治療中の患者さんがゴルフのあと急激な意識障害をきたし搬入。熱中症の疑いで治療していましたが血中アンモニア値が高く、高アンモニアの治療を実施すると速やかに意識が戻り元気になって翌日退院されました。抗がん剤の副作用として高アンモニア血症は大切ですが、庵谷先生はそれを考察し論文にまとめてくれました。

 

16.Ryo Tanabe, Yasuhiro Koide, Tetsuya Yumoto, Taihei Yamada, Yasuaki Yamakawa, Yoshinori Okazaki, Tomoyuki Takigawa, Hiromichi Naito, Atsunori Nakao. A Case of Cervical Anterior Longitudinal Ligament Ossification Causing Dysphagia and Lung Aspiration. J Gen Emerg Med. 2018, 3; 35-37.

研修医田邉先生の論文が掲載されました。何度も誤嚥性肺炎を繰り返す原因が頚椎にあることを突き 止め、考察とともに論文として発表してくれました。

 

17.Tsuboi C, Naito H, Hagioka S, Hanafusa H, Hirayama T, Kosaki Y, Iida A, Yumoto T, Tsukahara K, Morimoto N, Nakao A. Portal Venous Gas Following Ingestion of Hydrogen Peroxide Successfully Treated with Hyperbaric Oxygen Therapy. Acta Med Okayama. 2018; 72(2): 181-183. 

自殺目的で過酸化水素を飲んだ患者さんを当院にて高圧酸素療法で治療した症例のレポートを、紹介元である津山中央病院で初療にあたった坪井先生が発表してくれました。

 

18.Kosaki Y, Yumoto T, Naito H, Tsuboi N, Kameda M, Hirano M, Morizane Y, Senoo T, Tokuyama E, Nakao A. Traumatic Globe Luxation with Complete Optic Nerve Transection Caused by Heavy Object Compression. Acta Med Okayama. 2018; 72(1): 85-88.

小崎先生が顔面外傷症例の治療経過をまとめた報告が、掲載されました。車の修理中に車輛が顔面に落ちてきた患者さんでした。 脳神経外科、形成外科、眼科などチームで治療し、無事に退院されています。

 

19.Tetsuya Yumoto, Hiromichi Naito, Hiromi Ihoriya, Kohei Tsukahara, Tomoyuki Ota, Toshiyuki Watanabe, Atsunori Nakao. Raoultella planticola bacteremia-induced fatal septic shock following burn injury. Ann Clin Microbiol Antimicrob. 2018, 17:19

湯本先生が、熱傷のあと重篤な敗血症に陥った症例の経過をまとめました。消火のために溜池の水をかぶったことで感染したと考えられた症例でした。きれいな水で洗わないといけないことがわかりますね。

 

20.Ko Harada, Kohei Tsukahara, Tetsuya Yumoto, Yasuaki Yamakawa, Atsuyoshi Iida, Hiromichi Naito, Atsunori Nakao. A case of traumatic cardiopulmonary arrest with good neurological outcome predicted by amplitude-integrated electroencephalogram. International Journal of Surgery Case Reports. 2017, 36; 42–45

農作業中に下肢を切断し、出血性ショックから心肺停止になって当センターに搬送された症例の報告です。研修医の原田先生が、自らが蘇生をおこなった患者さんが社会復帰されたことに感激し、論文を書いてくれました。